会議のあと、録音や音声から議事録を作る。メールの下書きも生成AIに手伝わせる。こうした使い方が社内に入り始めても、顧客からの電話で聞いた内容だけは、応対した担当者のメモに残るという会社はあります。

電話にもAIを使えそうだと考えても、何から着手するかは別の問題です。いきなり応対そのものをAIに任せるのか、まずは通話後の記録から始めるのか。社内で提案するには、順番を決める材料が必要です。

総務省の「令和8年版 情報通信白書」には、業務類型ごとの生成AIの活用状況と、どの業務で効果を実感しているかを分けて尋ねた調査があります。その数字から、電話でも「まず話した内容を文字にして残す」という入口を考えてみます。

この記事でわかること

  • 総務省調査の対象と、数字を読むときの注意点
  • 生成AIの活用と効果実感がどの業務に偏っているか
  • 通話へ広げる前に決めておきたい運用上の論点

まず確認したい、この数字は誰の回答か

白書の企業向けアンケートは、2026年1月から2月にインターネットで実施されています。対象は、従業員10名以上で、2025年までにデジタル化の取組を始めた企業に勤め、企業全体の戦略などを理解する管理職以上の人です。

有効回答数は日本515件で、大企業353件、中小企業162件。米国、ドイツ、中国は各309件です。出典表記は、総務省(2026)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」となっています。

この結果を日本の全企業の実態そのものとして読むことはできません。すでにデジタル化へ取り組んでいる企業の管理職以上が、生成AIの活用や効果をどう捉えているかを見る資料として扱う必要があります。

活用は「議事録・メール作成補助」に偏っている

図表Ⅰ-2-1-7の左側は、生成AIを業務でどう使っているかを示しています。白書本文では、日本で活用を回答した割合は「議事録・メール作成補助」が約7割で最も高く、「営業・販売」が約6割、「社内ヘルプデスク」が約5割と続いたと整理されています。

「議事録・メール作成補助」では、「従業員が個人作業の効率化で活用している」が35.2%、「部署内の特定業務で活用している」が24.7%、「業務プロセスがAI中心に変更されている」が11.3%です。カスタマーサポートでは同じ区分が順に12.7%、22.1%、9.9%でした。

業務によって、個人の作業支援として入っているのか、部署の特定業務として使われているのか、その入り方にも違いがあります。

効果の実感は、さらに議事録へ集中している

同じ図表の右側は、活用状況とは別に「生成AIの活用効果を感じる割合」を示しています。「議事録・メール作成補助」は72.3%で、白書本文も「約7割となり、他の類型に比べて顕著に高い結果」と記述しています。

社内ヘルプデスクは42.7%、営業・販売は37.5%、カスタマーサポートは33.8%でした。活用している割合と効果を感じる割合は別の設問なので、片方の数字からもう片方を推定することはできません。

別の図表では、生成AIの活用により生じうる影響として「作業時間の短縮などによる業務の効率化」が61.6%で最も高く、「品質管理の精度向上やパーソナライズなどによる製品・サービスの質の向上」の32.2%や「人員不足の解消」の26.8%を大きく上回りました。回答結果の上では、効率化が最も多く挙げられています。

カスタマーサポートを「通話記録」の仕事として見る

カスタマーサポートの効果実感は33.8%で、議事録・メール作成補助の72.3%とは差があります。ただし、ここから「電話ではAIの効果が出にくい」と結論づけることはできません。

電話の通話と会議には、人が話した内容を後で確認できる形に残すという共通点があります。会議では議事録作成にAIを使っているのに、電話では担当者のメモだけに残っているなら、まず記録作業を切り出して考える余地があります。

この見方なら、電話へのAI導入を「応対をAIに置き換える話」から始める必要はありません。録音した内容を文字にし、要点を整理し、後から確認できる状態にする範囲から検討できます。通話の文字起こしの仕組みと精度を押さえておくと、音声を文字に変える作業と、その後の要約や確認を分けて考えやすくなります。

通話へ広げる前に、リスクへの答えを先に決める

白書で生成AI活用の懸念として最も多かったのは、社内情報の漏洩などのセキュリティリスクです。次が出力結果の精度、その次が著作権等の権利を侵害する可能性でした。通話へ広げる場合も、「データをどこで処理するか」「文字起こしや要約を誰が確認するか」「録音や利用のルールをどう整理するか」を先に決めておく必要があります。

VoiceLine AI は、通話の録音を解析して文字起こしと要約を作り、通話履歴に保存します。解析は通話終了後のバッチで行うため、通話中の音声に遅延を与えにくい設計です。応答した時点から顧客側とオペレーター側を分けてステレオ録音するため、誰が話したかをAIに推測させる必要がありません。

要約には、顧客の要望、応対内容、次にやるべきことの候補、キーワードが整理されます。不満兆候やリスクの目印は感情を断定するものではなく、先に確認したほうがよい通話の案内として表示されます。

音声と文字起こしの処理は、提供元の管理下にある自前GPUで行い、OpenAI等の外部AIへ送信しない設計です。この考え方はデータ主権:外部AIに送らない設計で扱っています。なお、通話のモニタリングや録音を運用するには、就業規則への記載や利用者への通知など、社内での取り扱いを整理しておくことが前提になります。

まとめ

総務省の調査では、生成AIの活用は「議事録・メール作成補助」で最も進んでいると回答され、効果を感じる割合も72.3%と他の業務類型より高くなっています。電話への効果を直接予測する数字ではありませんが、「話した内容を文字にして残す」用途を、通話でも検討する材料にはなります。

電話にAIを使うときも、最初から応対全体を変える必要はありません。まず通話記録を残す作業を切り出し、そのうえでセキュリティ、精度の確認、録音や利用のルールを決める。会議で始めたAI活用を電話の会話記録へ広げるなら、この順番が検討の起点になります。

出典

  • 総務省「令和8年版 情報通信白書」第Ⅰ部第2章「企業等におけるAI利用の進展」2026年7月24日公表(本文24〜27ページ、図表Ⅰ-2-1-7/Ⅰ-2-1-8/Ⅰ-2-1-10) 本文PDF
  • 総務省「令和8年版 情報通信白書(概要)」企業向けアンケート調査の調査概要 概要PDF