「改正個人情報保護法が成立した」というニュースを見て、自社のコールセンターで録っている通話録音や、AIによる文字起こし・感情分析にどう関係するのか、ピンとこない方も多いのではないでしょうか。顧客情報とひも付けて保存・検索できる通話録音や文字起こしは、改正前から個人情報保護法上の「個人データ」として扱われます。今回の改正は、そのデータの「集め方」「渡し方」「委託先の管理のされ方」に関わるルールを複数動かすものです。この記事では、通話AI解析を使う・検討する企業が押さえておきたい変更点を整理します。

顧客台帳とひも付けていない録音でも、録音内容や声から本人を識別できるものは「個人情報」に該当し得るため、適切な取扱いが必要です。

この記事でわかること

  • 改正個人情報保護法が、いつ・どのような経緯で成立・公布されたか
  • 通話録音・文字起こし・感情分析データの取扱いに関係する主な変更点
  • AI解析を委託しているベンダー側の管理体制を、今のうちに確認しておきたい理由

2026年7月17日に何が変わったか

個人情報保護委員会によれば、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」は2026年4月7日に国会へ提出され、7月10日に可決・成立、7月17日に「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」として公布されました。改正法は、一部を除き、公布日から2年以内(2028年7月まで)に政令で定める日から施行されます。明日から運用が変わるわけではなく、一部の規定は施行時期が異なる可能性もあります。

通話AI解析に関わる主な変更点

個人情報保護委員会の公表資料では、改正内容として次のような点が挙げられています。

  • 個人データの第三者提供や、公開されている要配慮個人情報の取得について、統計情報等の作成(AI開発等を含む)にのみ利用される場合は、本人同意が不要になる
  • データ処理等の委託を受けた事業者について、委託された個人データの適正な取扱いに係る義務が見直される
  • 個人情報の漏えい等が発生した際、本人の権利利益の保護に欠けるおそれが少ない場合は、本人への通知義務が緩和される
  • 重大な違反行為により個人の権利利益が侵害された場合等について、違反行為で得た財産的利益等に相当する額の課徴金を命じる制度が新設される

通話録音・文字起こしを自社で保有せず、AIベンダーに処理を委託している企業にとって特に関わるのが2点目です。委託先の適正な取扱いに関する義務が見直される以上、「委託先が録音データをどこで、何の目的で処理しているか」を自社側が把握し、説明できる状態にしておく必要性が増していきます。

声のデータは「特定生体個人情報」になるか、まだ確定していない

改正では、顔特徴データなどを念頭に「特定生体個人情報」という区分が新設され、取扱いに関する周知の義務化、オプトアウト制度による第三者提供の禁止、利用停止等請求の要件緩和が定められます。公表資料で中心的な例として挙げられているのは顔特徴データで、対象となる身体的特徴の具体的な範囲は今後、政令で定められます。

過去の委託調査研究では、声紋や歩容について、遠隔かつ本人が気付かない形で取得され得る情報として検討されていますが、これは検討の背景資料であり、声紋が「特定生体個人情報」の対象に含まれると確定した情報ではありません。通話AI解析で声の特徴量を扱う企業にとっては、断定はできないものの、今後の政令の動向を見ておく理由がここにあります。

委託先の管理体制を、今のうちに確認する

自社でAIによる通話録音・文字起こし・感情分析を行っている場合、次の3点を確認しておくと、施行時に慌てずに済みます。

  • 録音データや文字起こしの結果が、外部のクラウドAI(海外事業者を含む)に送信されているか
  • 委託先が、預かったデータをAI開発や自社サービス改善の目的で再利用しない契約になっているか
  • 漏えい発生時に、どちらが誰へ、どのタイミングで連絡するかが、契約上あらかじめ決まっているか

VoiceLine AI は、録音・文字起こし・感情分析のいずれも当社管理下の自前GPU環境で処理し、外部AIへ音声や文字起こしを送信しない設計です。委託先の処理範囲を確認する際の、ひとつの判断材料としてお役立てください。

施行までに、慌てて動く必要はない

改正法は原則として2028年7月までに施行されるため、今すぐ社内運用を変える必要はありません。ただし、通話録音データが「どこで」「誰の手で」処理されているかを今のうちに整理しておくと、政令で対象範囲が具体化した際に落ち着いて対応できます。当社側の処理場所と外部送信の有無は当社の処理範囲に書いてあります。委託先を比べる際の材料としてお使いください。


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本記事は2026年7月時点の個人情報保護委員会の発表に基づく一般的な情報です。個別の事案への適用や具体的な法令対応については、今後公表される最新のガイドラインを確認し、必要に応じて法律の専門家へご相談ください。