「もう案内の電話はかけないでください」「登録した情報を消してください」。こうした申し出は、専用の窓口ではなく、ふだんの代表電話や担当者の携帯に入ってくることがあります。受けた人は「承知しました」と答えて電話を切り、メモを残すか、担当部署に口頭で伝えます。

その申し出が名簿や配信リストに反映されたかどうかを、あとから確かめられる会社は多くありません。数週間後に同じ相手へ案内の電話がかかってしまい、「前に言ったはずだ」と言われて初めて、申し出が途中で止まっていたことが分かります。

この記事でわかること

  • 個人情報の相談窓口に寄せられた苦情が、2025年度にどう変わったか
  • 電話で受けた申し出が、社内のどこで途切れやすいか
  • 通話を記録して検索できるようにすると、何が確かめられるようになるか
  • 記録があっても、人が決めておかなければならないこと

相談は320件、窓口対応への苦情が3番目に

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)は、プライバシーマークを付与している事業者などの個人情報の取扱いについて、消費者からの相談を受け付けています。2026年9月15日に公表された「2025年度 消費者相談受付対応概要」によると、2025年度の相談は320件で、前年度の227件から93件(41.0%)増えました。このうち、プライバシーマークの付与を受けている事業者に関する相談は276件(86.3%)です。

相談の内訳で目を引くのは、「苦情等の窓口対応」という種別です。

相談の種別2025年度前年度
個人情報の安全管理関連(漏えい・紛失・管理不備等)31.2%(116件)31.8%
個人情報の開示等関連(開示・利用停止・消去等)17.7%(66件)—
苦情等の窓口対応16.9%(63件)7.2%(21件)

「苦情等の窓口対応」は、前年度は5番目だった種別が3番目になりました。漏えいのような事故そのものではなく、申し出たあとの会社の応じ方に対する不満が、目に見えて増えたことになります。

この数字は、相談窓口に届いた件数です。資料の対象はプライバシーマークの付与事業者に関する相談が中心で、世の中全体の苦情の量を示すものではありません。増えた理由が応対の悪化なのか、相談窓口が知られるようになったためなのかも、資料からは分かりません。そのうえで、どんな場面が相談になっているのかを、事例から見ていきます。

相談の事例に、電話が出てくる

資料には、種別ごとの相談事例が載っています。電話に関わるものを抜き出します。

  • 利用停止・消去の事例:「転職エージェントに私の個人情報を消去するよう申し出て、消去は完了したと連絡があったのに、また転職の勧誘電話がかかってきた」
  • 窓口対応の事例:「事業者の個人情報の取扱いについて電話で問合せをしたが、担当者の知識不足で説明してもらえなかった」
  • 従業者の監督に分類された相談例:「登録情報について担当者に電話で確認したところ、説明があいまいであった。従業員教育が不十分なのではないか」

1つ目は、申し出を受けて「完了した」と答えたのに、電話をかける側の名簿には反映されていなかった例です。2つ目と3つ目は、電話を受けた人が答えられなかった例です。

JIPDECが事業者に確認を行った例として挙げているものも、同じ形をしています。個人情報の削除を依頼し、削除したと説明を受けたあとも、営業担当者からSMSが届いているという相談です。申し出を受けた部署と、連絡を出す部署のあいだで、情報がつながっていません。

申し出が途切れる場所は、電話を切ったあとにある

資料は、利用停止や消去の求めについて、対応漏れを防ぐために「関係部署への周知や社内の情報連携、業務フローの整備、確認手順の確立」が重要だとしています。窓口対応については、「問合せ内容が適切に伝達される仕組みを整えること」と、窓口担当者への定期的な教育や情報共有を挙げています。

どちらも、申し出を受けた瞬間ではなく、そのあとの受け渡しを問題にしています。電話の場合、受け渡しが途切れやすい場所は3つあります。

1つ目は、受けた内容を書き残す場面です。電話を受けながら取ったメモには、相手の名前と用件の要点しか残りません。「案内を止めてほしい」のか「登録を消してほしい」のか、「電話だけ」なのか「メールも」なのか。言い回しの違いで、あとの作業は変わります。

2つ目は、担当部署に伝える場面です。口頭やチャットで伝えると、伝えた記録が個人の手元にしか残りません。伝えた側は済んだと考え、受けた側は聞いていないと考える食い違いが起きます。引き継ぎの抜けについては引き継ぎを軽くする応対メモ術でも取り上げています。

3つ目は、確かめる場面です。相手から「前に言ったはずだ」と言われたとき、いつ、誰が、どんな言葉で申し出を受けたのかを示すものがなければ、事実の確認から始めることになります。

資料には、メールの窓口について「メールが届いているのかもわからない」という相談事例と、受け付けたときに自動で返信する仕組みが対策の一つとして挙げられています。メールは届いた文面が残りますが、電話は切った時点で、受けた人の記憶とメモだけになります。受け付けた事実を残す手立ては、電話のほうが乏しいのがふつうです。

通話を文字で残すと、確かめられること

通話を録音し、文字起こしと要約を付けて検索できるようにしておくと、上の3つの場面のうち、1つ目と3つ目の様子が変わります。

受けた内容は、相手の言葉のまま残ります。「電話での案内だけ止めてほしい」と言ったのか、「登録そのものを消してほしい」と言ったのかを、メモを取った人の解釈を通さずに読み返せます。

あとから確かめるときは、相手の名前や「消去」「停止」「かけないで」といった言葉で通話を探せます。申し出があった日と受けた担当者が分かれば、その日以降に名簿が直されたかどうかを追う出発点になります。探し方は通話タグと検索で過去対応を引き出すにまとめています。

もう一つ、窓口担当者が答えられなかった通話を、あとで読めるようになります。資料が挙げる「定期的な教育や必要な情報共有」の材料として、実際にどんな質問で説明が止まったのかを共有できます(管理者レビューで応対品質を上げる)。

VoiceLine AI は、通話の文字起こし・要約・タグ付けと検索により、電話の内容を後から読める形で残す通話AI解析です。録音データを外部AIに送らず、当社管理下の環境で扱います。

記録があっても、決めておかなければならないこと

通話の記録は、申し出を名簿に反映する作業を代わりに行うものではありません。2つ目の場面、つまり担当部署に伝えて名簿や配信リストを直す作業は、人が行います。記録が役に立つのは、その作業が行われたかどうかを確かめるときです。

そのため、次のことは先に決めておく必要があります。

  • 利用停止や消去の申し出を受けたとき、誰に渡すか。受けた人が自分で直すのか、決まった担当に渡すのか
  • 申し出の通話にどんな印を付けるか。あとで一覧にできるよう、決まったタグや件名を付ける
  • 直したことを誰が、いつ確かめるか。申し出の一覧と名簿を、月に一度見比べる日を決める
  • 答えられない質問を受けたとき、どこへ回すか。その場で答えようとせず、折り返す先を決めておく

通話の録音そのものにも、個人情報としての取扱いが伴います。録音していることの伝え方、聞ける人の範囲、保存する期間は、記録を始める前に決めておくことです(通話録音とプライバシー)。申し出を確かめるために残した録音が、別の苦情のもとにならないようにします。

出典